Luminous Tale.

過去よりも未来よりも「現在」を幸せに生きるために。今ここにある日常を輝かせるための“魔法”をお届け。旧「月光の狭間」。

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ヴィトー・ルーミアを考える ~月組バウホール公演「Bandito」2度目の観劇を経て~

      2015/02/22

この記事の所要時間: 1141

一週間ぶりに月組バウホール公演「Bandito」を観劇してきました怜香@Ray_mnzkです。
前回の観劇以来、気が付くとこの公演(というかヴィトー)のことを考えてしまっていて、すっかり虜になっていた感がありました。さすが芝居の月組、観る者の心に刻まれるお芝居をしてくれます。

複数回観劇した場合は初回以外は感想書かないでおこうと思っていたのですが、この公演はそうはさせてくれないようです。すごく語りたい
以前にもお話ししましたが、やはり公演期間前半と後半とでは、出演者の演技も変わってくるのです。演技に深みが出てくる。初めて観た時はイマイチ話が呑み込めなかったとしても、しばらく経ってもう一度観たら、すんなりと話が理解できて、さらに感情移入して泣いたり……なんてことも、よくある話です。

さて、今日は二度目の観劇にてある程度固まった「ヴィトー・ルーミアについての考察」を綴っていきたいと思います。まだ観劇されていない方は「何のこっちゃ?」ってなると思います、申し訳ない……。
ネタバレも大いに含みますし、個人的な見解等も含みますので閲覧の際はご注意くださいませ。

なお、初回観劇時の感想については以下をご覧ください。

月組バウ公演「Bandito」観てきました – 泡沫の残滓

 

目次

 ・ヴィトー・ルーミア考(1) ~ジュリアーノとの出会い~
 ・ヴィトー・ルーミア考(2) ~ヴィトーの過去~
 ・ヴィトー・ルーミア考(3) ~ジュリアーノとの関わり~
 ・ヴィトー・ルーミア考(4) ~ジュリアーノの成長~
 ・ヴィトー・ルーミア考(5) ~ジュリアーノへの協力~
 ・ヴィトー・ルーミア考(6) ~ジュリアーノのために~
 ・ヴィトー・ルーミア考(7) ~ヴィトーにとってのジュリアーノ~
 ・今日のあとがき
 

ヴィトー・ルーミア考(1) ~ジュリアーノとの出会い~

今回語りたいことの8割以上はこの人物に関してです。としさん(宇月颯さん)が演じています。このような役柄のとしさんは初めて見たので、とても新鮮でしたね。

ヴィトー・ルーミア。
アメリカンマフィアで、現在はシチリアに逃亡中。シチリアマフィアのボスであるドン・ロッソの下で行動している(が、上司に対する態度は悪い)。
過去に仲間を裏切ったことがある。これが彼の人格に多大な影響を与えています。

ヴィトーは序盤での裏取引騒動でジュリアーノと出会い、その後アマーリアの実家襲撃事件でも関わることになります。この時は取引材料だったにも拘らず受け取らなかった金をジュリアーノに届けるのですが、そこでのヴィトーの発言が元でジュリアーノと戦闘することになります。
この戦闘はヴィトーの勝利に終わるのですが、ヴィトーはとどめは刺さず、
「何故諦めた。楽になれるとでも思ったか?お前のようなクズの逃げ道になってやる義理はない」
と告げて去っていくのです。

この時点ではジュリアーノのことを「クズ」呼ばわりしているヴィトー。彼のことを嫌悪しているのが分かります。
しかし、そのまま始末することもできただろうに、何故ヴィトーは彼を生かしておいたのでしょう?

ヴィトー・ルーミア考(2) ~ヴィトーの過去~

おそらくヴィトーがジュリアーノを生かしておいた理由は、彼の過去にあると思われます。

そもそもヴィトーがジュリアーノを「クズ」呼ばわりした原因は、ジュリアーノが「この島(=シチリア)を出ていく」と言い出したからです。
それに対しヴィトーは「仲間はどうするんだ?見捨てるのか」と告げるのです(この発言がジュリアーノの癇に障ることになるのですが)。
普通に「出ていきたければ出ていけばいい」とはならず、仲間のことを問うたことから、ヴィトー自身にもかつて仲間がいたことが分かります。孤高の一匹狼なら、「仲間」なんて言葉は出てこないはずですから。
そして「見捨てるのか」と付け加えたことから、過去に見捨てるなり、見捨てられるなりして、「見捨てる(られる)」ことがどういうことなのか知っているように感じられます(似たようなことを、作中でもランペドゥーザ侯爵が指摘しています)。

そして彼の過去は、2幕にて語られます(1幕でも軽く語られますが)。
アメリカ時代に、彼はマフィア仲間を裏切っているのです。
この時、彼は仲間ともども一人のマフィアに裏切られるのですが、裏切った張本人を前に、一転自分が裏切るのです。
その時の彼の言葉が非常に印象的です。

俺は決めたんだ、あんたより先に裏切るって!

生きるか死ぬか、裏切るか裏切られるかの世界であることを象徴する言葉ですね。
そしておそらく、彼はこの時後戻りができなくなったのだと思われます。

ヴィトー・ルーミア考(3) ~ジュリアーノとの関わり~

話がそれましたね。本題に戻りましょう。

過去に仲間を裏切ったことのあるヴィトー。彼が出会ったのは、島を出ていくという意志のもとに、仲間を見捨てようとしているジュリアーノ。

ヴィトーはそんなジュリアーノに、過去の自分を重ね合わせたのではないでしょうか。

仲間を裏切り、また裏切られた経験も持つヴィトーには、見捨てる側・見捨てられる側双方の痛みが分かるはずです。お互いにどういう痛みを抱えることになるのか、身をもって知っています。
いかにも冷血そうな雰囲気のヴィトーですが、その経験があるが故に、骨の髄から冷血というわけではないようです。表には出さないけれど、義理と情には篤い人間なのです(2幕での行動に表れています)。

仲間を見捨ててまで島を出ていこうとするジュリアーノの姿は、仲間を裏切って生き延びた過去の自分自身のように、ヴィトーの目には映ったことでしょう。

自分と同じようにはなってほしくない

そう思ったのではないでしょうか。
だからこそ、あえて罵倒するような言い方をしたのではないかなと、私は考えています。わざと相手を怒らせて、その上でねじ伏せることで、相手の考えが間違っていることを思い知らせようとしたのではないかなと……。

ヴィトー・ルーミア考(4) ~ジュリアーノの成長~

かくしてヴィトーの懸念は杞憂に終わり、ジュリアーノは仲間を見捨てることなく山賊活動を続けます。
しかし、順風満帆に思えた山賊活動は、アントニオに唆されたビショッタ達が農民たちを襲撃してしまうという大事件によって挫かれます。

この時が、ヴィトーとジュリアーノの再会となります。
当然の如く警戒するジュリアーノに、ヴィトーは「何もしない」と告げます。ただ、「出ていかなかったのか」と言うのみです。
そして事件の犯人を見つけ出すと宣言するジュリアーノに対し、それまで無言を貫いてきたヴィトーが、突如饒舌に話し始めます
裏切った奴を見つけ出してどうするのか、裏切った奴も元はお前についていこうとしていた奴だ、ハメられたのかもしれない、等々……
そして最後に告げるのが、この言葉。

一度手を下したら、後戻りはできないぞ

そう、これは過去のヴィトー自身にかかわることです。
自分は手を下して、後戻りできなくなった。その苦しみはわかっているから、お前には同じ思いはしてほしくない……そんな風に受け取れます。

この辺りから、ヴィトーは明らかにジュリアーノに肩入れしています。あれほどジュリアーノのことを罵倒していたヴィトーが、です。
恐らくジュリアーノが仲間を見捨てなかったことを知って、彼のことを見直したのでしょう。自分と同じ轍は踏まない、自分には出来なかったことをやってくれる奴だと思ったのかもしれません。
実際、この事件を知ったヴィトーは、まるで自分のことのように苛立ちを露わにします。ヴィトーにとってジュリアーノが特別な存在になっていることを表しているように思えますね。

ヴィトー・ルーミア考(5) ~ジュリアーノへの協力~

その後事件を起こした実行犯はビショッタであることが判明するのですが、実はこれを暴いたのはジュリアーノではなく、ヴィトーなのです。

本来なら、山賊活動とは何のかかわりもない、むしろジュリアーノ敵対相手ともなる立場のヴィトーが、積極的にジュリアーノに協力している
この時点ではアントニオの護衛を務めているヴィトー。ビショッタがアントニオの屋敷に逃げ込んできた、と説明していますが、普通ならわざわざジュリアーノに突き出す特段の理由はないはずです。アントニオの判断を待つことになっていたでしょう。
しかし、ヴィトーはジュリアーノにビショッタを突き出した。

やはり、これまでの様子から、ジュリアーノには「見込みがある」と思ったからでしょう。
しかし、それだけではないようにも思えます。

実際に裏切り者を前にしたジュリアーノが、どのような行動に出るか?」を確かめたかったのではないでしょうか?

自分のように、裏切り者として始末してしまうのか。それともその罪を赦すのか。
前者であれば、過去のヴィトーと同じになってしまいます。
しかし、ジュリアーノは後者を選びました。それどころか、「責任は自分にある」と罪を背負ったのです。

これをもって、ヴィトーはジュリアーノのことを完全に認めたのでしょう。過去の自分と同じ状況にありながら、自分とは異なる選択を選び取ったのですから。
アメリカ亡命を手伝うというスターンの提案に「ジュリアーノだけでも逃げるんだ」と仲間が後押しするも、仲間を見捨てるわけにはいかないと渋るジュリアーノ。
そこに、ヴィトーが核心的な言葉を告げます。

「いや、出るべきだ。今のお前にはその資格がある

かつてジュリアーノのことをクズ呼ばわりしていたヴィトーの言葉とは思えません。
この時、ヴィトーは非常に重要なことをジュリアーノに告げます。ジュリアーノが生きているということが、彼らの希望になる、と。
ジュリアーノ自身にはその発想はなかったのでしょう。この発言のおかげで、彼はアメリカ亡命を決意します。

ヴィトー・ルーミア考(6) ~ジュリアーノのために~

事件にケリを付けるために、ジュリアーノはアントニオの屋敷を襲います。
そしてその場でアントニオとロシアンルーレットを試み、身の危険を感じたアントニオの発砲によりジュリアーノは倒れてしまいます。

この時ヴィトーは(アントニオの護衛という立場として)同席しており、アントニオから叱責され、「ドン・ロッソを呼べ!」と怒鳴られるのですが、彼はその命令には従いません
それどころか、ロッソがアントニオの元を去ったこと、ロシアンルーレットに使われた銃はアントニオのものであることを告げ、逆にアントニオを窮地に陥れるのです。
そしてアントニオを助けると銘打って、アントニオの屋敷から財産を洗いざらい巻き上げて帰ります。

この一連の行動がすべてジュリアーノのためであったことは、その後の彼の行動、そして無事にジュリアーノがアメリカ亡命を果たしたことから明らかです。
アントニオの屋敷を襲う直前、ジュリアーノは「待ってくれ、やり残したことがある。協力してくれないか」と告げます。
これは直接ヴィトーに告げられたものではないですが、ヴィトーに言っているのは間違いありません。

ヴィトーはジュリアーノのことを認めているからこそ、ジュリアーノからのこの要請に全面協力したのでしょう。

ちなみにジュリアーノが去った後、彼が死んだと思い込んで喪服で祈るアマーリアの元に、ヴィトーは修道院の権利書とかつて奪ったままだった指輪を手渡しに行きます。
これもジュリアーノからの依頼なのでしょうが、それこそこの一件に関わっていたランペドゥーザ侯爵が届けに行ってもいいようなものなのに、(マフィアである)ヴィトーが行くところが、彼の義理堅さを表しているように思えます。
(ちなみにこの時のヴィトーの発言から、実はジュリアーノは死んでいないことが分かったりします)

ヴィトー・ルーミア考(7) ~ヴィトーにとってのジュリアーノ~

最初は敵意をむき出しにしていたにも関わらず、その成長を目の当たりにし、最終的にはジュリアーノのことを認めたヴィトー。
今まで数々の人間の醜さ、弱さに直面し、苦しみを抱えてきたヴィトーだからこそ、それらを乗り越え強さを手に入れたジュリアーノのことは希望に映ったのではないでしょうか。
ジュリアーノを認めたヴィトーの姿からは、どこかジュリアーノを眩しく思っているかのような、そんな雰囲気さえ感じます。

そしてジュリアーノは山賊仲間たちをはじめ様々な人達の後押しで成長を遂げていくのですが、そこにある意味もっとも深く関わったのがヴィトーなのです。
最初にジュリアーノに「仲間を見捨ててはならない」と教えたのは、誰あろうヴィトーです。これがなければ、ジュリアーノが成長することはなかったかもしれません。

過去の自分とよく似たジュリアーノ。自分と同じ思いはしてほしくないから、彼の考えを(強引に)改めさせた。その甲斐あって、ジュリアーノは自分が抱えたような苦しみは抱えずに、正しい道を選ぶことが出来た。
そう考えると、ジュリアーノを導き、成長させたのは、ヴィトーと言えるでしょう。
そして、ヴィトーにとってジュリアーノは、自分が選び取ることのできなかった、「こうでありたかった」自分の体現者であるのかもしれません。

今日のあとがき

ああ、書いた書いた……
本当はフィナーレのことだとかいろいろ書きたかったんですけど、ヴィトーの考察だけで力尽きましたはい……。
公演観ていると、時々こうやって考察したくなるのです。だいたい月組が多いです。お芝居が深いからですね。「行間を読む」ような考察が出来るのは喜ばしいことですし、楽しいです。

今回のお話はあくまで私の想像にすぎません。正しい解釈ではないと思います。
ですが、こうやって舞台では描かれていない部分について考えてみるのも、観劇の一つの楽しみ方ではないかなと思っていたりする今日この頃です。

 - 宝塚

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